和紙(紙)は、植物のセルロース繊維が水の表面張力によって結合したシートです。
和紙を作るためには、原料、水、道具が必要で、それらを人の知恵と技術によって結晶させます。
では、コウゾを原料とした和紙の作り方を見ましょう。
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コウゾの刈り取り
【刈り取りは、コウゾを収穫する作業です。】
12月から1月にかけてコウゾを刈り取ります。(コウゾは、春に芽を出した1年目の木を使います。)
刈り取ったコウゾは、余分な枝を払い落とし長さをそろえ束ねます。 -
コウゾ蒸し(カンゾカシキ)
【コウゾ蒸しは、原木から原料となる皮を剥ぎ取りやすくするための作業です。】
束ねたコウゾをコシキに入れ、桶をかぶせて3~4時間蒸します。
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皮剥ぎ
【皮剥ぎは、原木から皮を剥ぎ取り和紙原料とする作業です。】
蒸し終えたコウゾに冷水を掛けます。これをビックリ水といいます。 冷めないうちに根元側から先端に向けて皮を剥ぎ取ります。 このとき、皮が1枚でむけるように注意します。バナナむきはいけません。 また、先端が筒状にならないように最後までしっかりむきます。 むき終えた皮は、一握り程度を片方で束ね、ハザにかけて乾燥します。
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タクリ
【タクリは、表面の皮を取りのぞき、白皮にする作業です。】
タクリコという刃物で表皮をそぎ落とします。 乾燥したコウゾを一昼夜以上水に浸します。 コウゾには、黒皮という表皮と甘皮が残っていますので、黒皮が上になるように板にのせます。 タクリコを黒皮に当て、黒皮と甘皮をそぎ落とします。 このとき、繊維の傷や節の痕などもあわせて取り除きます。 この作業が済んだものを白皮といいます。 白皮は乾燥保存するか続けて紙にします。
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煮熟
【煮熟は、繊維に含まれる不純物を外に出し、軟らかくするための作業です。】
白皮を一昼夜以上水に浸し、充分に水分を吸収させます。 沸騰したお湯に、煮熟する白皮の乾燥重量の15%の重さのソーダ灰を入れます。 白皮を入れ、約2時間煮熟します。 火を止め、そのまま自然に冷まします。 冷めたコウゾをザルにあけ、流水でソーダの滑りがなくなるまで水洗いします。
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チリ取り
【チリ取りは、変色した繊維の傷や筋、節などを取り除くための作業です。】
水洗いの済んだ白皮を水に浮遊させ、手で端から順に送りながらチリを取り除きます。 チリをきれいに取り除かないと、でき上がった紙にちりが入ってしまいます。 紙の品質を左右する大切な作業です。 取り除いたチリは、安価なチリ入り紙(シベ紙)の原料になります。
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叩解
【叩解は、長い繊維を細かく分解する作業です。叩解が不十分だと肌理の粗い紙になります。】
チリ取りの済んだ繊維をソフトボールほどの大きさにまとめ、水を軽く絞ります。 たたき台に乗せます。 バイというカシの木の角棒で丹念に叩きほぐします。 ときどき向きを変えながら、繊維が綿のように細かくなるまで叩きます。 これで紙を漉くことができる状態になりました。
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トロ搾り
【和紙の特徴である粘液(トロ)を抽出する作業です。】
トロロアオイの根を台に乗せ、槌で叩きつぶします。 冷水に浸し、手で軽く撹拌します。 木綿袋に入れ、粘液を搾り出します。 この粘液をトロといいます。 トロを加えることで、和紙の特徴である流し漉きが可能になります。
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船水作り
【舟(水槽)に、コウゾ繊維、トロ、水を入れ、紙をすける状態にする作業です。】
舟に水を入れます。 コウゾを入れ、竹の棒で撹拌します。 トロを少しずつ加えさらに撹拌します。 紙漉きに適した粘り具合になったら、竹櫛のような馬鍬でさらに撹拌します。 繊維が細かく均一に分散したら舟水の完成です。
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紙漉き
【水に解かれた繊維をシート状にする作業です。乾いたものが紙です。】
木枠にスノコを取り付けた簀桁で舟水をすくいます。 前後左右に揺り動かしながら水をろ過します。 好みの厚さになるまで繰り返します。これを流し漉きといいます。 ろ過し終えたら簀に残った繊維シート(湿紙)を紙床に移します。 次に漉いたものを前に漉いたものの上に積み重ねます。
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圧搾
【紙床に積み重ねられた湿紙の水を絞るとともに、繊維を密着させる作業です。】
紙床に積み重ねられた湿紙を一晩放置し、自然に水を切ります。 湿紙の上に重石を載せ、徐々に水を絞ります。 水の絞り具合により重石を増やします。 ※重石の代わりにジャッキを使うところもあります。 最初から圧力をかけすぎると、紙床の湿紙がズレて台無しになってしまいます。
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乾燥
【湿紙を乾かし和紙を完成させる作業です。】
紙床から湿紙を1枚ずつはがし、乾燥用の板に移します。 湿紙の中心から外に向けて刷毛で板に密着させます。 このとき、板との間に気泡ができたり、シワが入らないように注意します。 天日や熱で乾燥します。 乾燥後に板からはがし、和紙の完成です。